「ToDoリスト」はやる気を奪う?上手な目標の立て方を解説

仕事や課題をこなすときに使われる「ToDoリスト(やることリスト)」ですが、これはモチベーション維持の観点からすると良くないことが多いです。

しっかり目標を立てたつもりが、それによって目標から遠ざかってしまうこともあるのです。

今回は、科学的に根拠のある上手な目標の立て方を解説します。

目標を立てただけで何かをやった気分になってしまう

目標を達成するためのプランを組み立てただけで、何かをやった気になった経験はありませんか?

  • 「ToDoリスト」を作っただけで目標に一歩前進した気分になる
  • トレーニング器具や低カロリー食品を購入しただけでダイエットした気分にな
  • 参考書を買っただけで勉強した気分になる
  • 有名人の講演に参加しただけで何かを達成した気分になる

などなど。気分になっただけで実際には何もできなかった人が多いと思います。

これはあなた特有の症状ではなく、誰にでもよくあることなのです。

この仕組みは、科学的に解明されていて対処法もわかっています。やや長めの内容になりますが、困っている人にとって参考になると思うので、ぜひついてきてください。

良いことをした後には悪いことをしてしまう

人間には「良いことをした後には悪いことをしてもいいと思ってしまう」習性があることが、心理学の実験で明らかになりました。

有名なものの一つに、心理学者のブノワ・モナンとデイル・ミラーによる「ステレオタイプと意思決定に関する研究」があります。この研究は多くの人に衝撃を与えました。

それまで心理学者たちは、人はいったん意見を表明した後は、それに従って行動し続けるものだと思っていました。しかしそうではなく、良いことをした後に、バランスをとるようにして悪いことをしてしまいがちなのです。

性差別に関する実験で、学生たちは「まったく反対」「やや反対」「やや賛成」「まったく賛成」のどれかを選びます。

問題は2グループに別れ

①<ほとんどの女性は本当に頭がよいとはいえない>というあからさまに差別的な意見

②<なかにはほんとうに頭がよいとはいえない女性もいる>という表現がやわらいだ意見

があります。

実験の主旨は、それらに対して意見を表明させた後、就職面接という設定で男女数名の候補者の適正を判断させ、性差別意識を見るというものです。

その結果、なんと、①のあからさまに性差別的な意見に対して「まったく反対」した学生のほうが、②に「やや賛成」した学生よりも、能力のある女性に対して差別的な判断を下しました。

前の実験で「自分は性差別的ではない!」とはっきり表明した人ほど、後から性差別的な判断を下してしまいやすくなる傾向があるのです。

たいていの人間は「自分が道徳的に完璧でありたい」と思ってはおらず、意識的にせよ無意識的にせよ、バランスをとってしまいます。そのため、良いことをした後には悪いことをしてしまいがちになるのです。

だから、高いモラルを求められる職業……政治家、警察、公務員、お坊さんなどは、仕事の圧力が働いている場以外では不品行をしてしまいやすくなるので、注意が必要と言えます。

このような、「良いことをしたら悪いことをしてしまいやすくなる」傾向のことを「ライセンシング効果」と呼びます。

「ライセンシング効果」は目標達成の妨げにもなる

良いことをしたら悪いことをしやすくなる「ライセンシング効果」は、公的な善悪だけではなく、個人的な目標達成にも深く関わっています。

自分の目標に邁進する人は、その目標にとってプラスになることを「良い」と考え、マイナスになることを「悪い」と考えているので、「ライセンシング効果」が目標達成の妨げになってしまうのです。

つまり、「ライセンシング効果」により、目標を達成する上でプラスになることをした後は、マイナスになることをしてしまいやすくなります。

「目標に向かって前進したことを確認することでますます頑張れる」と考えている人は多いですが、むしろ気を緩めて努力が続かなくなってしまう危険性のほうが高いのです。

シカゴ大学のアイェレット・フィッシュバッハとイェール大学のラヴィ・ダールは、「人は目標に向かって前進すると、逆に目標から遠ざかるような行動をしたくなる」という研究結果を示しました。

ある実験で、ダイエットが順調に進んでいる参加者たちは、奨励賞としてリンゴかチョコレートバーのどちらかが貰えることになりました。

進捗を確認してダイエットが順調に進んでいると自覚した参加者ほど、太りやすいチョコレートバーを持って帰るパーセンテージが高かったそうです。

長期的な目標に対して進捗が見られると、脳はその目標に向かってあなたを駆り立てていたスイッチを切り替えて、また達成されていない目的(だらけたい、食べたいなど)へ注意を向けさせます。そのために自分を甘やかすような行動をとりやすくなってしまうのです。心理学者はこれを「欲求の開放」と呼んでいます。

このような仕組みがあるがゆえに、いわゆる「一歩進んで二歩下がる」といったことが起こりがちなのです。

さらに恐ろしいことに、「ライセンシング効果」では、たとえ「良いことをした」わけでなくとも、「良いことをしたと感じた」だけで、悪いことをしてもいいかと思ってしまいます。

例えば、人はチャリティーに寄付しようと考えただけで、自分へのごほうびとして何か買いたくなるそうです。

頑張りたいと意気込むだけで、そのごほうび(あるいは景気づけ?)として遊んだり過食したりしてしまいます。

目標をリストに描きだしただけで、何かやった気分になり、目標には何の関係もない息抜きを初めてしまいます。

言うまでもなく、このような「ライセンシング効果」に振り回されてしまうと、成功はおぼつかなくなります。

努力し続けられる上手な目標の立て方

先ほどまでの話を振り返ると、「ToDoリスト(やることリスト)」には2つの危険性があることがわかります。

それは

  • やることを明確にしただけで何かを達成した気分になる危険性
  • 目標に向かって前進したと確認することで努力が続けにくくなる危険性

の2つです。

やることを描きだして終わったらチェックをつけていくタイプのToDoリストは、タスク管理としては効果的ですが、モチベーションを維持し続ける上ではあまり良いものとは言えないのです。

自発的な努力を継続したいときには、一つ一つの段階に「達成」や「ごほうび」を設定するような進捗管理は向いていません。

「○日までに○○をやる」というものよりも、「毎日○○を○○時間やる」という一日単位のToDoリストのほうが、モチベーション維持の上では効果的です。

香港科技大学とシカゴ大学の研究によると、進捗ではなく「努力する姿勢」に焦点を当てた場合、「ライセンシング効果」が起こらず、努力を続けやすくなることがわかっています。

ある実験で、誘惑に負けなかったことを学生たちに思い出してもらったところ、「ライセンシング効果」が生じて、後に70%の学生が自分を甘やかすような行動をしました。

しかし、「ライセンシング効果」を抑制する魔法のような言葉を発見したのです。

学生たちに「なぜ誘惑に負けなかったのか?」という聴き方をしたところ、今度は69%の学生がその後も誘惑に負けないようになりました。

「なぜ?」という単純な言葉が自制心を向上させます。「達成したこと」ではなく、「継続」や「状態」に意識を向けることで、努力が続けやすくなるのです。

「ライセンシング効果」を防ぎ、努力を継続しやすくするための目標の立て方は

  • 目標を立てることそれ自体に労力や意欲を割きすぎない
  • 「毎日○○をやる」など1日単位のToDoを決める
  • 「達成」ではなく「継続」を重視する

というものになります。

まとめ

  • 人は良いことをした後に悪いことをしてもいいと思ってしまう
  • 目標に向かって前進したことを確認すると、逆に目標から遠ざかることをしたくなる
  • 達成した項目を確認していくタイプの「ToDoリスト」は、モチベーションを維持する上では好ましくない
  • 「何を達成したか」ではなく、「自分はなぜそれをやっているのか?」「努力を継続できているか?」に目を向けると効果的

(参考書籍:ケリー・マクゴニガル『スタンフォードの自分を変える教室』)

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