「決心するだけ」にならないように。失敗した自分を肯定することの難しさと大切さ

自制心を発揮できず、落ち込んだ後で、「次こそは!」と再び決心したことはないでしょうか?

実は人間は、「失敗して落ち込んでからまた決心する」を繰り返してしまいがちなのですが、同じことをやればやるほどそこから抜け出せなくなってしまいます。

今回は、「決心するだけ」を抜け出すために何が必要なのかを解説していきます。

少し失敗するともっとダメになりたくなる「どうにでもなれ効果」

目標達成において、最大の脅威となりうるもののひとつが「どうにでもなれ効果」です。

「どうにでもなれ効果(The What-The-Hell Effect)」という言葉は、ダイエット研究者のジャネット・ポリヴィとC・ピーター・ハーマンが最初に使いました。

ダイエットをしている人の多くが、ちょっとつまずいただけでひどく落ち込んでしまい、「もうどうにでもなれ!」と暴食してしまいます。はめを外して、落ち込んで、さらにはめを外すという悪循環に陥ってしまうのです。

ポリヴィとハーマンの実験で、ダイエット中の被験者の体重が実際よりも2キロほど多く表示されるようにしたところ、落ち込んだ被験者は、増えてしまったぶんの体重を減らそうとするのではなく、憂さ晴らしのやけ食いに走りました。

マイナスの要因が見えたときに、それを取り返そうとするのではなく、マイナスの方向に向かって突っ走ってしまうのです。

この「どうにでもなれ効果」は、ダイエットのみならず、意志の力が必要なあらゆる問題で起こります。

ニューヨーク市立大学とピッツバーグ大学のある実験で、被験者にお酒を飲んだ記録をつけてもらったところ、前の晩に飲みすぎて落ち込んだ人ほど、その翌日も、そのまた翌日も飲みすぎてしまったそうです。落ち込んでしまうほど、罪悪感の反動で飲まずにはいられなくなるのです。

何かをがんばっているときに、「やっちまった!もうダメだ!」と自己嫌悪に陥ってしまうと、堤防が崩壊するようにして、自己コントロールがますますできなくなるのです。

うまくいかないときこそ自分を甘やかす?

自分を責めることで、「どうにでもなれ効果」が発生し、モチベーションや自己コントロールのさらなる低下を招きます。

これに対して、「自分を思いやること」は、やる気の向上や自制心の強化につながります。

実は、「罪悪感を抱くよりも自分を許すほうが責任感が増す」のです。

わたしたちの素朴な考え方としては、強く自分を叱責することで次はちゃんとできると思いがちですが、それこそが「逃げ」なのです。自分を責めれば責めるほど、次も怠けてしまいやすくなります。

カナダのカールトン大学で行われた、学生たちが勉強を先延ばしにする様子を記録した実験によると、試験直前まで勉強しなかったことで自分を責めた学生と、自分を許した学生とでは、自分を責めた学生のほうが、次の試験勉強も先延ばしする傾向が見られたそうです。

間違えてしまった場合は、自分を責めるよりも自分を思いやったほうが、「どうにでもなれ効果」が発動せず損失が少なく済み、さらに次に良い結果を残しやすくなるのです。

ダイエットの決まりを破った人に対して、「こういうときもあるから落ち込まないで!」と甘やかせば、もっと食べたくなってしまうように思えます。しかし、自己嫌悪や罪の意識が取り除かれたほうが、食べ過ぎてしまう確率が低くなります。

ダメな自分を許すことは、現実を直視しようとすることでもあります。自分自身に対して思いやりを持ったほうが、自分を厳しく批判するよりも、失敗の事実をありのままに見つめられるようになり、「失敗してしまった自分」という問題を解決しやすくなるのです。

「こういうときもあるよね!」と「もうダメだ!」では、どちらも失敗はしているのですが、前者のほうが被害は抑えられ、次のパフォーマンスがよくなりやすいということです。悲観的になるほうが実はダメ人間の思考なのです。

徹底的に落ち込もうとすることこそが「逃げ」であり、失敗した自分を肯定する努力をしたほうが次につながります。

「自分は変わるんだ!」と思って気分がよくなる「いつわりの希望シンドローム」

「どうにでもなれ!」と落ち込んだ後に、わたしたちは「この反省をもとに生まれ変わるんだ!」と再び決心してしまいがちです。

「どうにでもなれ効果」の命名者であるポリヴィとハーマンは、この傾向を「いつわりの希望シンドローム」と呼んでいます。

わたしたちが「変わる!」と決心するのは、「どうにでもなれ効果」で落ち込んでいるときが最も多く、「決心」することで気分がよくなります。「あんな失敗をしたのは自分だなんて思うのはよそう、これまでとはまったく違った自分になるんだ!」というわけです。

新たに誓いを立てると、胸は希望で満たされます。目標を達成した後の自分の姿を思い描いて楽しくなります。ダイエットを始めようと決心しただけで元気になり、エクササイズの計画を立てただけで気分が高揚するのです。

落ち込んでいる状況での「決心」は逃避のようなものであり、目標が非現実的なものであるほど楽観的になります。そのため、一時的に気分がよくなっても、また同じことを繰り返してよけいに落ち込んでしまうのです。

落ち込んだときに希望を見出したかのように思えた「決心」は、具体的な努力を積み重ねるフェーズに入るとすぐに消失し、結局は「かんたんに目標を諦めてはまた決心する」を繰り返すはめになります。これが、自分を批判した人のほうがまた次からも同じ失敗をしてしまいやすい理由です。

「決心するだけ」は、「気晴らしのための戦略」としては効果がありますが、「自分を変える戦略」としては最悪のものです。

努力した後の自分を先取りしていい気分を味わうことができるので、実は手軽に楽しめる娯楽でもあり、一概にすべてを否定することはできません。しかし、気分がよくなるゆえになかなかやめられず、目標達成の大きな障害となります。

本当に何かを成し遂げたい人は、「決心するだけを楽しんでいないか?」を自問する必要があるでしょう。

失敗した自分を肯定できるように

  • ちょっと失敗するとさらに失敗しようとしてしまう「どうにでもなれ効果」
  • 失敗したときは自分を責めるよりも自分を肯定したほうが次につながる
  • 落ち込んでから決心してまた失敗してを繰り返す「いつわりの希望シンドローム」

このような傾向が人間にあることは覚えておくべきでしょう。

何かにチャレンジする上で、失敗に直面してしまうことは絶対にあります。そのときに、過度に悲観的になったり、自分を批判したり自己嫌悪に陥ってはいけません。自己否定の後は再び決心したくなるものですが、それをやっても一時的に気分がよくなるだけです。

投げやりになったり卑屈になったりせずに、失敗した自分を肯定しなければならないのです。

ダメな自分を受け入れて許すことは、「もうダメだ!」とリセットするよりも、ずっと忍耐力と責任感が必要です。つまずいて投げ出したくなったときに最も大切なのは、自分を肯定しようとする努力なのです。

まとめ

  • 一度失敗するともっとダメになろうとしてしまう
  • ダメになりきった後、「決心するだけ」によって気分がよくなる
  • 落ち込んだときの決心には持続性がなく、同じ失敗を繰り返してしまう
  • 失敗したときには自分を批判するよりも自分を思いやる努力が必要
  • 失敗した自分を肯定することで、ダメになろうとするのを防ぎ、次につながりやすくなる

(参考:ジェイン・マクゴニガル『スタンフォードの自分を変える教室』第6章)

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