知能や性格は努力で変えることができるか?あなたはどう考える?

人間の知能や性格は、生まれつきのものなのか、それとも変えていくことができるのか?

心理学では、人がこれらの資質について抱いている見方や考え方を「暗黙理論」と呼びます。

なぜ「暗黙」かというと、ほとんどの人が改めて質問されるまで、自分がどちらの考えを持っているかはっきり自覚していないからです。そして、「暗黙(無意識)」にどう考えているかは、わたしたちの努力のパフォーマンスに大きく影響しています。

今回は、それを自覚した上で、どう活かしていけばいいのかを解説します。

自分がどう考えているかをチェックしてみる

以下の質問それぞれに、「まったくそうは思わない」場合は1点、「その通りだと思う」場合は6点、それ以外の場合は思う度合いによって2〜5点の中間の数字を選んでください。

Q1 人間の知能の程度には個人差があり、大きくは変えられない。
Q2 いくら努力をしても、知能はたいして高められない。
Q3 頭のよさは、生まれつき決まっている。

3つの質問の点数を合計してください。

合計が10点以上であれば、あなたは「決定論者」です。
合計が9点以下であれば、あなたは「成長論者」です。

これは、「あなたがどう考えているか?」という問題です。

事実として遺伝がどれくらい人間に影響を及ぼすかの研究も進んではいるのですが、あなた自身が「暗黙(無意識)」にどう考えているかが重要なのです。

暗黙の信念は、わたしたちの日常生活にさまざまな影響をもたらします。

「知能は変えられないもの」と考えている人は、自分の知能の低さを認めたがらないので、能力を証明できる場所を好み、難易度の高いチャレンジや自分に不利なことをできなくなります。

「性格は変えられないもの」と考えている人は、自分をいい気分にさせてくれる相手を探し、意見がぶつかったり、うまくいかない出来事があったりすると、その関係から逃げ出そうとします。

一方で、「努力すれば成長できる」と考えている人は、難しい課題にも粘り強く取り組み、うまくいかない相手との関係もよくしていこうとする傾向があります。

目標の捉え方次第で、学びや成長の機会が妨げられたり、助けられたりすることがよくあるのです。

実は子どもでさえ、「決定論」か「成長論」かの、暗黙な信念に基づいて行動しているといわれます。

無意識の考え方がわたしたちに与える影響は大きいのですが、それを自覚することで自分の信念を変えていくこともできます。

もし自分が暗黙の「決定論者」である場合、それがあなたの成長の機会を妨げている可能性が高いです。

自分には向いていない、才能がないから仕方がないといった理由で諦めてしまうことが多いなら、「成長論者」を目指してみるのもいいかもしれません。

あなたは「証明型」か「習得型」か?

次は、暗黙の信念ではなく、目標タイプの違いです。これは必ずしもどちらが良いというものではありません。

以下の質問を読んで、それぞれ普段の自分の考えに、「まったく当てはまらない」場合は1点を、「よく当てはまる場合」は5点を、それ以外の場合は思う度合いによって2〜4点の中間の数字を選んでください。

Q1 学校や職場では、人よりもよい成績を収めることが非常に重要である。
Q2 ときには厳しい意見を言われても、素直な意見を述べてくれる友人は大切だ。
Q3 つねに新しい技能や知識を得ようとしている。
Q4 人によい印象を与えることに強い関心がある。
Q5 賢さや有能さを周囲に示すことを重視している。
Q6 友人や知人とは、オープンかつ正直に接している。
Q7 学校や職場では、つねに何かを学び、自分を成長させようとしている。
Q8 人からどう思われているかが気になる。
Q9 人から好意を寄せられると、いい気分になる。
Q10 同僚や同級生よりも、勉強や仕事でよい成績を収めたい。
Q11 自分を変化させ、成長させてくれるような人間関係が好きだ。
Q12 学校や職場では、自分の能力を示すことにエネルギーを注いでいる。

これらのスコアによって、あなたの目標タイプが「証明型」か「習得型」かがわかります。

やや計算が大変ですが

Q1、Q4、Q5、Q8、Q9、Q10、Q12の点数を合計し、それを7で割ってください。それが「証明型」のスコアです。

Q2、Q3、Q6、Q7、Q11の点数を合計し、それを5で割ってください。それが「習得型」のスコアです。

よりスコアの高いほうが、あなたの目標タイプです。

たいていの人は、「証明型」と「習得型」の両方のタイプの傾向が見られるものの、どちらかに偏っているそうです。

目標タイプの違いは、学校、職場、スポーツなどさまざまな状況での目標達成において、アプローチの違いを生みます。

「証明型」と「習得型」の違い

「証明型」は、はっきりとした結果を得ることに労力が注がれます。目標には白か黒かという性質があり、目標が自尊心と密接に結びついています。試験で最高点をとるのはたいてい「証明型」ですが、諸刃の剣でもあります。状況が悪くなると自尊心が傷つけられやすくなり、失敗やつまずきに弱いです。

「習得型」は、具体的な目標の達成ではなく、どれだけ進歩や成長をしたかを重視します。教科書などをじっくり読み込んで内容を深く理解しようとするタイプで、自己承認ではなく自己成長が自尊心とつながっています。「証明型」と比較して成果は上げにくいのですが、ネガティブな事態に強く、難しい問題に対しても長期的な努力が続けやすいのです。

目標タイプ 証明型 習得型
モチベーション 達成できるかどうか どれだけ成長できるか
短期的なパフォーマンス 高い 低い
失敗やつまずきに対して 弱い 強い

モチベーション研究者の多くは、基本的には「習得型」を推奨しています。「習得型」の目標タイプのほうが、長期的な視野で大きな問題にチャレンジしやすく、幸福感も高い傾向にあるからです。

しかし一方で、「証明型」の目標タイプの成果を上げる能力も見逃せません。誰かを競争して何かをやりとげなければならない場面において、「証明型」は大きな力を発揮します。

マックス・ウェーバーの著書であり世界的な古典となっている『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』では、カルヴァン主義(プロテスタント)の教義が、資本主義が生まれる原動力になったことが指摘されています。

カルヴァンの予定説は、「神に救済される人間はあらかじめ決定されている」というもので、「証明型」の目標タイプの最たるものと言えます。それを信じるプロテスタントは、自分が救済される人間であることを証明するため、得られた財産を私利私欲のために使うことなく、次々に投資に回して産業を大きくしようとしたのです。それが資本主義の原動力となりました。

このように、「証明型」のモチベーションは、とても大きな力を生み出すのです。

「証明型」と「習得型」を使い分けよう

「証明型」の目標タイプは、やる気を高めて、目覚ましいパフォーマンスを導きだします。しかしうまくいかないときには、自分には能力がないと早々に結論づけて、簡単に諦めてしまいやすくなります。

「習得型」の目標タイプは、ネガティブな経験も改善のチャンスと捉えることができて、困難を乗り越えやすくなります。過程を楽しみ、長期的に目標に向かって進んでいくことが可能です。

「証明型」と「習得型」は、切り替えることも可能です。あなたがどちらのタイプだったとしても、この両方の目標タイプがあるという知識は役に立つはずです。

  • 短期的にどうしても成果が欲しい状況では「証明型」
  • すぐには解決できない困難な問題に対しては「習得型」

というふうに、目標タイプを切り替える意識でいくと、効果を上げやすいのです。

まとめ

  • 人は暗黙に「決定論」か「成長論」かどちらかの考え方を持っている
  • 努力して何かを変えていこうとするなら「成長論」が望ましい
  • 目標タイプには「証明型」と「成長型」がある
  • 「証明型」は短期的な成果を上げやすいが、失敗やつまずきに弱い
  • 「成長型」は、難しい問題に対してもモチベーションを保ちやすい

(参考:ハイディ・グラント・ハルバーソン(著)、児島修(翻訳)『やってのける』第2章、第3章 ※「決定論者」か「成功論者」かのテストは2章より引用、「証明型」か「習得型」かのテストは3章より引用)

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