ポジティブ思考は常に正しいわけではない!「獲得型」と「防御型」の使い分け

世の中の多くの自己啓発書やビジネス書は、「ポジティブ思考」を提唱しているものが多いです。

しかし、ポジティブ思考がよいことなのかどうかは時と場合によります。ネガティブ思考がパフォーマンスを上げる場合もたくさんあるのです。

人は、「ポジティブ(楽観的)」になるか「ネガティブ(悲観的)」になるかによって、同じ問題に対してもアプローチが違ってくるのです。

自分のモチベーションのあり方を知ろう

まず、あなたが「獲得型」なのか「防御型」なのかがわかるテストをします。

次のテストに答えてみてください。

Q1 人間の資質や特徴について、自分にあったらいいと思うものは何ですか。
Q2 人間の資質は特徴について、自分になくてはならないと思うものは何ですか。
Q3 自分にあったらいいと思う人間の特徴や資質をもう一つ書いてください。
Q4 自分になくてはならないと思う人間の特徴や資質をもう一つ書いてください。
Q5 Q3にもう一度答えてください。
Q6 Q4にもう一度答えてください。
Q7 Q3にもう一度答えてください。
Q8 Q4にもう一度答えてください。

これをやってみて、「あったらいい」の答えがすぐに浮かんできた人は「獲得型」です。「なくてはならない」の答えが浮かんできた人は「防御型」です。

この「獲得型」「防御型」は、目的に対するフォーカスの違いであり、心理学者トーリー・ヒギンスの分類です。

同じ目標を目指していても、「獲得型」か「防御型」かで、アプローチに大きな違いが生じます。よって、自分がどちらのタイプに偏っているのか知っておくことには意味があるのです。

それでは次に、あなたが過去にどちらのフォーカスによって多くの成果を得てきたのかを探ってみましょう。

次の質問を読んで、それぞれ普段の自分の考えに、「まったく当てはまらない」場合は1点を、「よく当てはまる場合」は5点を、それ以外の場合は思う度合いによって2〜4点の中間の数字を選んでください。

Q1 懸命に頑張って何かを成し遂げることが多い。
Q2 子どものころは、親が定めた規則に従っていた。
Q3 新しく始めたことを、うまくできるほうである。
Q4 人生で成功するために積極的に行動してきたと思う。
Q5 子どものころ、親が許可しないことはしないようにしていた。
Q6 慎重に行動しないと、失敗することがある。

Q1、Q4、Q4の得点の合計が、「獲得型」のスコアです。
Q2、Q5、Q6の得点の合計が、「防御型」のスコアです。

このスコアの比較によって、あなたがどちらのフォーカスでより成功してきたかがわかります。

ほとんどの人は、「獲得型」か「防御型」のどちらかに偏っているそうです。

「獲得型」と「防御型」の違い

目標が実質的にはまったく同じものであったとしても、「獲得型」と「防御型」ではフォーカス(焦点)が違います。

「獲得型」は「得るもの」にフォーカスし、「防御型」は「失うもの」にフォーカスします。同じ成果をあげることに対しても、それを「達成や理想」と考えるか、「義務や責任」と考えるかでは違ってくるのです。

例えば、「将来は医者になる」という目標に対して、「医者になることを夢見る」のが「獲得型」のフォーカスで、「医者になれなければ親を失望させてしまうと考える」のが「防御型」のフォーカスです。

もちろん、「獲得型」か「防御型」かは、目標それ自体の特性によって決まる場合もあります。例えば「宝くじを買う」というのは誰にとっても「獲得型」の目標であり、「予防接種をする」というのは「防御型」の目標です。

以下は、「獲得型」と「防御型」の違いをまとめた表です。

フォーカス 獲得型 防御型
傾向 楽観主義 悲観主義
考え方 頑張って手に入れる もらえるべきものを守る
成功したとき 大喜びする ほっとする
モチベーション 賞賛によって高まる・成功者の話で高まる 批判によって高まる・落伍者の話で高まる
効果的なフィードバック ポジティブなもの ネガティブなもの
得意なスパン 短期戦 長期戦
得意なこと 抽象的な思考・創造的なプロセス 現実的な計画・着実な実行

「獲得型」は、何かを手に入れたいという強いモチベーションがあります。有利な状況にとびつきやすく、成功の見込みが高いと感じるほど、やる気と自信がわいてきます。逆に、ネガティブな状況には弱く、ちょっとの失敗で意欲が低下しやすいです。

「防御型」は、失敗することを避けようとし、危険から身を遠ざけて安心したいという欲求を強く持っています。そのため、ネガティブなフィードバックを与えられることによって警戒心が高まり、目標へのモチベーションが上がります。

「獲得型」は大きな成功をした人の話で自分を奮い立たせ、「防御型」は失敗して苦しんでいる人の話で自分を奮い立たせるなど、モチベーションの上がり方に違いがあります。

また、「獲得型」志向が強い人は、多機能型イヤホンなど最先端の製品を好み、「防御型」志向の強い人は、保証期間の長い製品や長年の実績のある製品を好む傾向にあるそうです。

育てられ方によってフォーカスが偏る

研究によって、わたしたちが「獲得型」か「防御型」のどちらかに偏る理由の一つが、「育てられ方」にあることがわかっています。

これは単に、親から多くの報酬を与えられれば「獲得型」になり、親から多く罰せられれば「防御型」になるという話ではありません。

影響力が高いのは、「報酬と罰の与えられ方の違い」です。

子どもが正しいことをしたときに賞賛や愛情を与え、悪いことをしたときはそれを「保留する」というのが、「獲得型」の子育てです。

子どもは、親の理想に合った行動を取れば愛情が得られ、親を失望させれば寂しく孤独になると学びます。そして、親の愛を獲得することを目標と結びつけるようになります。

一方で、悪いことをしたときに罰し、正しいことをしたときには罰を「与えない」というのが、「防御型」の子育てです。

子どもは、親から求められている通りの行動をすれば平和に暮らせることを学びます。そして、なるべく罰を与えれないように、失敗しないことを目標とするのです。

また、親との関係に限らず、文化、社会、周囲の環境によってもフォーカスが偏ります。

例えば、大まかにいって、自立が重んじられる西洋では「獲得型」の目標が、相手との関係性が重んじられる東洋では「防御型」の目標が促されるといった傾向があるそうです。

このようにして培われる「獲得型」と「防御型」との違いは、日々の決断、物事へのアプローチ、不安への対処、幸福感など、わたしたちの生活に大きな影響を及ぼしています。

ポジティブ思考が常に正しいわけではない

「獲得型」と「防御型」は、どちらのほうが優れているといったものではなく、どちらかにも長所と短所があります。

自己実現や成功法則を謳う自己啓発書などは、基本的に「ポジティブ思考」や「プラス思考」といった「獲得型」を推奨する傾向があります。えてして悲観的な考え方は成功にも結びつかないし幸せになれないよくないものだと見做されがちです。

たしかに、「獲得型」のほうがクリエイティブな能力を発揮しやすく大きな成功には結びつきやすいです。しかし、「獲得型」は楽観主義の怠け者になりやすいという欠点もあり、すぐに諦めやすく、やるべきことを先延ばしにしてしまう傾向もあります。それに比べて、長期的な努力が得意で実行力があるのが「防御型」です。

発言するだけで食べていけるような「口だけ」の人も「獲得型」に多く、その手の人の発言に喚起されるものも「獲得型」が多いので、自己啓発書の類はポジティブを推奨するものが多数派になります。

アメリカではそのような潮流を危惧する研究者もいて、例えばバーバラ・エーレンライク『ポジティブ病の国、アメリカ』など、アンチポジティブの本も多く出版されています。

ポジティブ思考は良い面がたくさんありますが、欠点もあるのです。

「獲得型」に比べて悲観的な「防御型」は、現実的な計画力と実行力に優れているので、筋道が示された課題に対しては大きな成果をあげやすいのです。

ネガティブなフィードバックが悪いとは限らない

ネガティブ思考が悪いという風潮は根強いですが、「防御型」の人はネガティブなフィードバックによってモチベーションが上がります。

ハイディ・グラント・ハルバーソンとトーリー・ヒギンスで、フィードバックがモチベーションに与える実験をしました。

被験者は、アナグラムのゲームに挑戦させられ、報酬として4ドルもらえますが、上位30%にはさらに1ドル報酬が加わり、下位30%には1ドル差し引かれます。

作業時間の半分でいったん中断させ、その時点での成績が上位30%に入っているかどうかのフィードバックを個別につたえ、それぞれの「成功の見込み」と「モチベーション」がどう変化したかを見ます。

結果は以下のようでした。

フォーカス 獲得型 防御型
考え方 頑張れば手に入る1ドルを稼ぐ もらえるはずの1ドルを守る
ポジティブなフィードバックの後 成功の見込みとモチベーションの両方が上昇 成功の見込みは変化せず、モチベーションは低下
ネガティブなフィードバックの後 成功の見込みとモチベーションの両方がやや低下 成功の見込みが激的に下がり、モチベーションは急上昇

「防御型」の人は、ネガティブなフィードバックに対して大きな危機感を持ち、モチベーションを急上昇させました。目標がうまくいっていない状況で大きく力を発揮できるのです。大きく成功する見込みが少ないぶん、大きく失敗することもないのです。

世の中では大成功した人に注目が集まりがちであり、「獲得型」の傾向を賞賛する意見が多いですが、実際には「防御型」のフォーカスで物事を捉える人もたくさん存在します。

ネガティブな考え方は、悪い状況に陥るのを防ぎやすく、「予防」にはとても効果的なのです。(悪い状況に陥ってしまった後は、ネガティブ思考はマイナス面が大きくなるのですが。)

成功のための着実なステップを積み重ねる段階においては、「失敗したくない」という悲観的なフォーカスで望むほうが成果をあげやすいのです。

「獲得型」と「防御型」を使い分けよう

「獲得型」は、探索的で抽象的な思考を好み、創作的なプロセスを得意とします。「防御型」は、堅実な選択肢を好み、うわつかず着実に課題をこなすことを得意とします。

また、「獲得型」はスピードを好み、短期的にパフォーマンスを発揮しやすい傾向があり、「防御型」は正確さを好み、長期的にパフォーマンスを発揮しやすい傾向があります。

禁煙とダイエットの成功率を調べた研究では、「獲得型」は最初の半年での成功率が高く、「防御型」はその後の一年間の維持率が高いことが示されたそうです。

「獲得型」か「防御型」かは、個人の特性に拠るところが大きいのですが、自らの傾向を知った上で、目標に応じて意識してフォーカスをチェンジしていくこともできます。

「獲得型」のアプローチでうまくいかないときは「防御型」に、「防御型」で行き詰ったときは「獲得型」に、というふうにフォーカスを意識して変えようとしてみるのも有効なアプローチです。

「獲得型」と「防御型」の違いという知識は、あなたの今後の目標の立て方の指針になるでしょう。

まとめ

  • 「獲得型」と「防御型」はどちらも短所と長所がある
  • ポジティブ思考が必ずしも正しいわけではない
  • ネガティブ思考には大きく失敗をしにくいというメリットがある
  • 自分の傾向を把握した上で、目標に応じて「獲得型」と「防御型」を使い分けていくことができる

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