天才とはどういう人なのか?成功と才能(遺伝)の関係

多くの人が何かしらの形で「成功」したいと思っているでしょう。

「成功」と「才能」の関係について、「成功するために才能なんて一切必要ない」と考えている人は少数派だと思います。

しかし、今からする話を聞くと、また違った考え方ができるかもしれません。

「良い遺伝子」と「悪い遺伝子」があるわけではない

「才能(遺伝)」と「成功」はどのような関係を持っているのでしょうか。

わたしたちは、「彼が成功した理由は父親の優秀な遺伝子を受け継いだから」といったように、「良い遺伝子」を持っていれば成功し、「悪い遺伝子」を持っていれば成功が遠ざかると考えてしまいがちです。

また、「強い遺伝子を持つ者が子孫を残し、弱い者が淘汰されていく」といった考え方も根強くあります。

しかし、最近の遺伝学の研究では、「良い遺伝子」対「悪い遺伝子」というモデルがくつがえされ、通常では問題があるとされる遺伝子が、状況さえ異なればすばらしい遺伝子になり得るという考え方がされています。

たとえば、大多数の人は正常なドーパミン受容体遺伝子「DRD4」を持っていますが、一部の人は突然変異種の「DRD4-7R」を持ちます。

「DRD4-7R」は、ADHD、アルコール依存症、暴力性と関連があり、「悪い遺伝子」と考えられてきました。

しかし、ある状況で悪い作用を引き起こす遺伝子の性質が、別の状況では良い作用を引き起こすのです。

社会心理学者アリエル・クナフォは、「DRD4」と「DRD4-7R」で、どちらの子どもが自分から進んでほかの子とキャンディを分け合うかを実験しました。そして、キャンディを与える傾向が強かったのは「DRD4-7R」を持つ子どものほうだったのです。

「DRD4-7R」を持つ子どもは、虐待や育児放棄などの劣悪な環境で育つといじめっ子になりやすい傾向がありますが、良い環境で育つと通常よりも親切な人間になりやすいのです。

このような例はいくつもあり、ある状況下では短所になるものでも、条件が異なれば長所になる場合があります。

悪い性質は良い性質と結びついており、逆に、良い性質は悪い性質と結びついていて、それぞれコインの裏表なのです。

「天才」の正体

「天才」は「奇行」とセットで語られることが多くあります。

心理学者ディーン・キース・サイモントンは

創造性に富んだ天才が性格検査を受けると、精神病質(サイコパシー)の数値が中間域を示す。つまり、創造的天才たちは通常の人よりもサイコパス的な傾向を示すが、その度合いは精神障害者よりは軽度である。彼らは適度な変人度を持つようだ

と言います。

通常の人と精神障害者の間にいるのが「天才」というわけです。

創造的分野で大成功しているアーティストは、平凡なアーティストに比べて、サイコパシー傾向が著しく高い数値を示します。

また、並外れてクリエイティブな人間は、傲慢で誠実性に欠け、支離滅裂である傾向があります。

短所は長所と結びついていて切り離すことができません。子どもの攻撃性や不品行を抑制しようとすると、成績改善には役立ちますが、生涯収入が減ります。

また、癇癪など感情を露わにする男児のほうが、そうでない男児と比べてより生産的で、収入が3%高いという研究結果もあるそうです。

短所と長所は表裏一体なのですが、成功者の特性は好意的に解釈されがちなので、マイナスの傾向ですらポジティブな資質としてまかり通ります。

古いジョークに、「貧乏人なら頭がおかしいと言われ、金持ちなら物好きだと言われる」というものがあるそうですが、落伍者にとってはネガティブだと見なされるものも、成功者ならポジティブに解釈されがちです。

極端な特徴が、日常生活が送れなくなるほど重度ではなく、かつ環境に適応して通常の人々に受け入れられたとき、その人は「天才」と言われるような能力を発揮するのです。

優秀であることと抜きん出ていることは違う

多くの人は、「優秀であること」の延長に「目覚ましい成果」があると考えていますが、今まで見てきたように、それは違います。

学校で優秀な成績を収めるような資質そのものが、一般社会でホームランヒッターになるような資質と相反するのです。

私たちは「最良」になろうとして多くの時間を費やしますが、多くの場合「最良」とは単に世間並みということです。「抜きん出た能力」は、優秀さを極めた先にあるのではなく、通常からの逸脱にあります。

学校教育を受けていると、「最も優れている」と「最も劣っている」の両極があり、その間にそれぞれの能力に応じて人々が収まっているように考えてしまいます。

しかし実際は、それぞれの短所と長所を持った人達が「分散」しているというのが実情に近いようです。

そして、「通常」の領域からはみ出ながらも、その性質が「通常」の人から賞賛を受けるような環境が整ったとき、その人が「抜きん出た能力」を発揮するのです。

成功するにはどうすればいいか

ハーバード大学ビジネススクールのゴータム・ムクンダは、シンプルな回答を提示します。

それは

①自分を知ること
②自分に合った環境を選ぶこと

です。

もちろん、人間はそれほど簡単に自分のことがわかるわけではないし、コロコロと環境を変えられるわけでもないのですが、「自分を知り、自分の有利な環境に行こうとする」意識は常に必要です。

特に、通常から逸脱している傾向が強い人(天才)ほど、環境が重要になります。天才は、自分の性質にとって有利な環境では目覚ましい成果をあげますが、不利な環境では悲惨なことになってしまいがちです。

通常からの逸脱が少ない傾向にある人は、幅広い環境に適応しやすいのですが、それでも、自分の性質に有利な場を求めて損はありません。また、「天才」と言われるように極端でないことを悔しがる必要も一切ありません。

それぞれの遺伝子や才能に、「良い」「悪い」があるのではなく、「異なる」だけなのです。

自分の短所やコンプレックスを感じていない人のほうが少ないかもしれませんが、それは絶対的なマイナスではなく、長所と短所が混ぜ合わさった「特徴」です。

「自分には才能がない!」と絶望したり、「ひたすら努力!」をして適正の無いことにリソースを割くよりも、「自分には何が向いているのか」をよく考えることで、より成功に近づけるのです。

(参考:エリック・バーカー(著)、橘玲(監訳)、竹中てる実(訳)『残酷すぎる成功法則』第1章)

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