楽観主義(ポジティブ思考)VS悲観主義(ネガティブ思考)どっちがいいのか?

楽観的に考えることと、悲観的に考えること、どっちのほうが成功により近づき幸福になれるのでしょうか?

あるいは、どのような場面でポジティブに考え、どのような場面でネガティブに考えるのが効果的なのでしょうか?

今回は、楽観主義(ポジティブ思考)と悲観主義(ネガティブ思考)、それぞれのメリットとデメリットを解説していきます。

「やり抜く力」は楽観主義から来る

最近のモチベーション研究では、「GRIT(グリット)」というキーワードが持ち出されがちです。

「GRIT」とは、英語で「勇気、やる気、根性」のくだけた言い方で、「歯を食いしばってがんばる」みたいなニュアンスです。

少年漫画などの主人公も多くが「GRIT」を持っているタイプなので、日本人からすればまったくめずらしい概念ではないと思います。

困難に立ち向かうためには「GRIT」が必要というわけです。

アメリカ海軍は、過酷な業務を担う特殊調査部隊を調査し、「GRIT」を持っているとされる人が、逆境に耐える際に何をやっているのかを調査しました。

それによって、「ポジティブな心のつぶやき」が重要であることがわかりました。

人は意識せずとも、毎分頭の中でたくさんの言葉をつぶやいているそうです。その中には「きっとできる!」というポジティブなものや、「もうダメだ!」というネガティブなものもあります。

頭の中で「自分はやりとげられる!」と強く励ますことが、「GRIT」の秘訣なのです。これは、後に陸軍がやった研究なのでも、効果があることが検証されました。

また、成果を上げる営業マンの最も重要な資質は、「楽観主義であること」の一点に絞られるようです。人と接することが得意かどうか、外面的かどうかなどはあまり関係なく、さまざまなタイプの営業マンがいるのですが、ポジティブであることだけが必須条件だったそうです。

楽観主義は、「やりきって成果を上げなければならない」場面において、とても大きな力を発揮するのです。

悲観的だと「無力」を学習してしまう

「学習性無力感(学習性無気力)」という言葉を聞いたことはありますか?

自分にはどうにもならない罰やストレスにさらされることで、「何をしても意味がない」ことを学んでしまい、行動を起こせば状況を挽回できるにもかかわらず、何もできなくなってしまうことです。

ペンシルバニア大学のマーティン・セリグマンとその同僚は、犬をつかった条件反射の実験をしていました。

犬たちは、真ん中の低めの壁で二つに仕切られた箱の片側にいます。ある音がなった後、犬のいる側の床に電気ショックが流れます。音を聞いた瞬間に壁を超えて反対側に移れば、苦痛から逃れることができるのです。

犬がどうやって電気ショックを避けるかの実験だったのですが、犬はいくら電気ショックを浴びてもいっこうに動こうとせず、電気を浴びて苦しみ続けたそうです。

反対側に移れば簡単に苦痛から逃れられるにもかかわらず、犬たちは音を警報音と認識することができずに、自分たちは何をしても苦痛を回避できないという「学習」をしてしまったのです。

自分の努力によって状況を変化させることができないと思ってしまうと、「無力感」という概念を学習してしまいます。

悪い意味で「現実を見る」ようになり、それを打開する可能性を試せなくなるのです。

楽観的か悲観的かの違いはどこにあるのか?

過酷な状況に陥ってしまったとき、楽観的になれる人と悲観的になってしまう人がいます。その違いはどこから来るのでしょうか?

アウシュビッツを生き延び、名著『夜と霧』を世に出した精神科医のヴィクトール・フランクルは、極限状態で生死を分かつのは、「生きる意味を見いだしているかどうか」と語ります。

果てしなく恐怖の続く過酷な収容生活に耐えられず、屈強な者も、勇ましい者も、電流が流れている有刺鉄線に飛び込んで自殺を図りました。しかし、「自分の生きる理由」を自覚していた人は、どうにもならない状況でも生き延びることができたのです。

愛情をもって自分を待ちわびてくれる人間や、やり残した仕事に対する責任を自覚する者は、決して人生を投げだすことができない。彼は”なぜ”自分が生存すべきかを知っているので、ほぼ”どんな”状態での生存にも耐え抜くことができるのだ。

認知バイアスの研究でノーベル賞を受賞した心理学者、行動経済学者のダニエル・カーネマンは、「バイアス」とはわたしたちの脳内に備わった意思決定を早めるためのショートカットだと言います。

考え方の偏りのことを「バイアス」と呼ぶのですが、バイアスは合理性に欠ける偏ったものであると同時に、生きていくうえで必要な仕組みでもあります。

世の中には天文学的な数字のことが毎秒起こっているので、人間の脳がそれを処理しきれるはずもなく、偏った形で認識するしかないのです。そしてわたしたちは、「ストーリー」というフィルターを通してカオスな状態に秩序を与えます。

「今日はどんな日だった?」と聞かれたとき、その日に起こったあらゆることを語るのは到底不可能です。そのため、あなたは自分にまつわるストーリーを作って、それを語ることになります。

「ストーリー」の力は人間にとって本質的なものです。

アウシュビッツでは、自分は生きなければならないというストーリーを持っている人が生き延びました。

同じ病院の清掃スタッフという仕事をしていても、「ただの働き口だ」と思っているスタッフは、満足感を得られず不幸に働いています。一方で、「この仕事は自分の天職で、病院を綺麗にすることで患者の回復に貢献している」というストーリーを自分に語るスタッフは、仕事に意義を見いだし、満足し、幸福になっています。

スティーブ・ジョブズは、「君は残りの人生、ずっと砂糖水を売っていきたいか、それとも世界を変えるチャンスをつかみたいか?」と、魅力的なストーリーを語ってペプシコーラCEOのジョン・スカリーを引き抜きました。

もちろん、「宗教」も強力なストーリーです。

「ストーリー」は、正確なものとは言えず、偏ったものだからこそ、人を強くさせ、幸福にします。結局のところ、ストーリーがなければ、人は無限の情報や不安に押しつぶされて身動きができなくなってしまうのです。

そして、「ストーリー」を信じることができる人は楽観主義です。

一方、「ストーリー」は間違っている(偏っている)ものなので、それを信じることができない人が悲観主義です。

「ものごとを正確に把握できる」のが悲観主義

悲観的な人は、間違ったストーリーに疑問を持ち、ストーリーを信じている人に馴染めません。

「抑うつリアリズム」という言葉があります。うつ病の人は世の中の因果関係を正確に見ているというのです。自分の才能や能力や影響力を過大評価している(ストーリーを信じている)くらいが普通の人なのです。

心理学者のシェリー・テイラーによると

健康な心は、自分が気を良くするような嘘を言う

そうです。

普通よりものごとを正確に見たり予測したりしてしまうと、悲観的になりやすいのです。

弁護士はアメリカで最も報酬が高い職業であるにもかかわらず、彼らの54%は仕事に不満があると調査で答えています。また、弁護士は他の職業より3.6倍もうつ状態に陥りやすいそうです。

偏りのあるストーリーを排除して、事実を見ようとすることが弁護士に求められる能力だからです。

ロースクールで優秀な成績を収めるのも悲観主義です。弁護値という職業で成功しやすい適正そのものが、彼らを悲観主義で憂うつにするのです。

ただ、状況を変えられる可能性があるのに学習性無気力に陥ってしまうように、悲観的な人の考えが必ずしも正しいわけではありません。「楽観的な人よりもは正確な傾向がある」というだけです。

誰もが偏見なしにものごとを語ることはできないし、未来を正確に見通すことができるわけでもないのです。

楽観主義の弱点は実行力が伴わないところ

ここまで聞くと楽観主義がすばらしい考えのように思えますが、何か目標を打ち立ててそれを達成しようとするとき、楽観主義はよくない効果を発揮します。

『成功するには、ポジティブ思考を捨てなさい』の著者である心理学者ガブリエル・エッティンゲンは、「欲しいものを夢に思い描くと実現の可能性が高まる」という説を否定し、思い描くことで逆に「実現」からは遠ざかると主張します。

人間の脳は、幻想と現実を見分けるのが得意でなく、何かを思い描くと、脳の灰白質はすでに望みのものを手に入れたと勘違いしてしまうそうです。そのため、夢に思い描くだけで満足してしまい、目標達成のために自分を奮い立たせることなく、逆にリラックスしてしまうのです。

ダイエットの実験で、目標を立てるときに、ポジティブなイメージ(成功した後のほっそりした自分)を思い描いた女性たちは、ネガティブなイメージ(太ったままの醜い自分)を思い描いた女性たちと比べて、体重の減少が10キロほど少なかったといいます。

「夢を見る(成功した自分を妄想)」ことは、その実現にとってマイナスの効果が大きいのですが、成功した後の自分を妄想するのは楽しいのでなかなかやめられないのです。

具体的な努力をしていて苦しくなったときのポジティブさはとても有効ですが、まだ何も始めていない計画の段階でのポジティブさは逆効果です。

目標を達成するために計画を立て、自発的に努力を積み重ねなければいけないときには、悲観的なほうがうまく行きます。

ポジティブ思考は常に正しいわけではない!「獲得型」と「防御型」の使い分け

の記事に詳しく書いてありますが、悲観主義者は、現実的な計画を立てて、着実に努力していくのが得意です。

目標が決まっているものを確実に実行するためには、現実を甘く見ない悲観主義者が有利なのです。

ポジティブとネガティブの使い所

楽観主義と悲観主義には、それぞれ長所と短所があり、「使い所」があります。

逃げられないけど頑張らなければいけない状況、部活や軍隊などスケジュールがしっかり管理された場所において、ポジティブ思考は大きな力を発揮します。逃げることのできないさまざまな困難の中で希望を見失わずに生きるために、楽観主義はとても重要です。

一方で、「夏休みの宿題」や「ダイエット」のような、自主性のある課題において、楽観主義は足を引っ張る原因になります。

楽観的な思考しかできない人は、大言をふりまいたり妄想にふけるだけで何もできなくなってしまいがちなので、自分が努力せざるを得ない環境に行くのがいいでしょう。

目標が明確に定まっている状況で、堅実にやるべきことをこなしていくとき、ネガティブ思考は怠けるのを防いでくれます。現実的な計画を立てて、確実にやりとげるためには、悲観主義が必要です。

一方で、自分でコントロールできない追い詰められた状況で悲観主義だと、学習性無気力で動けなくなったり鬱になったりしやすいです。

悲観主義者はまず、「事実を把握すること」にはそれほど現実的な力はなく、人間なんでもわかるわけではないという認識が必要です。楽観主義者よりは現実が見えているといっても、それはあくまで相対的なものです。「自分は何もできない人間だ」とか「人生詰んでしまった」と考えてしまっても、それが本当かどうか判断できるほど人間は賢くなく、未来を見通せるわけでもないのです。

もちろん、そもそも人は楽観主義者と悲観主義者にくっきり別れているわけではなく、そのときどきでポジティブになったりネガティブになったりするものです。これまでの話を踏まえれば、楽観主義であるべき状況で楽観的に、悲観主義であるべき状況で悲観的になれるのが望ましいのです。

成功から最も遠ざかるダメなパターンは、夢を思い描くときにポジティブになって、苦しくなるとネガティブになることです。

目標を決めたときには悲観的に自分を諌めて、努力の途中で苦しくなったときには自分の力を楽観的に信じられるのが、優れた精神状態なのです。

まとめ

楽観主義 悲観主義
良いところ 前向きで粘り強くなる、幸福になりやすい ものごとを正確に認識できる、油断せずに実行できる
悪いところ 夢を思い描くだけの無能になりがち すぐにあきらめて無気力になりがち
有効なところ 逃げられないとき、ピンチのとき 目標に向かって自主的な努力をするとき
有効でないところ 目標に向かって自主的な努力をするとき 逃げられないとき、ピンチのとき

参考は「「楽観主義」と「悲観主義」のどちらが良いのか? -ドラゴン忍者の放言日記」。

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