誘惑に負けそうなときは「ゆっくり呼吸」を試してみよう

「目標のために欲望を我慢しなければならない」という状況は誰にでも訪れます。

  • ダイエット中だけど目の前のケーキを食べたい
  • 禁煙中だけどどうしてもタバコを吸いたい
  • 練習をサボって家でゲームをしたい
  • 課題をやらなければいけないのについSNSを見てしまう

などなど、誘惑に抗うのは簡単なことではありません。

そのようなときのための良い方法があります。それは、「呼吸を遅らせること」です。

誘惑に負けそうなときは「ゆっくり呼吸」を試してみよう

「呼吸を遅らせること」は、自制心を発揮するための良い方法であることが明らかになっています。

何かを我慢する必要にせまられたときは、まずは「ゆっくり呼吸」をしてみましょう。

やり方はとても簡単で、「呼吸のペースを1分間に4回から6回までに抑える」だけです。

吸って吐いての1セットを、10秒から15秒かけて行います。普通の呼吸よりはだいぶ遅いペースです。ただいつもより呼吸を遅くするだけでいいのです。

あまり難しく考えず、深呼吸だと思ってやってもいいでしょう。

1分から2分くらい「ゆっくり呼吸」を終えた後は、目の前の欲望を我慢しやすくなっているはずです。

すぐに試せる簡単な方法なので、試しにやってみることをおすすめします。

以降は、なぜ呼吸を遅らせることに効果があるのかの根拠を説明していきます。

「外的な脅威」と「内的な脅威」

科学の発展により、自己コントロールの問題は、心理学だけでなく、生理学にも関わる問題であることがわかってきました。つまり、精神だけでなく、心と体の両面が合わさってこそ自制心を発揮できるのです。

「健康で長生きをする妨げになりうる」という共通点がありながらも、その性質が正反対である「外的な脅威」と「内的な脅威」の二つの種類の脅威があります。

  • 目の前の危険に対処したり、貴重な食料を獲得することは、「外的な脅威」との戦いです。
  • 怠けず訓練したり、健康に気を使って食べ物をひかえることは、「内的な脅威」との戦いです。

健康心理学者のケリー・マクゴニガルは、これらを「サーベルタイガー」と「チーズケーキ」に例えます。サーベルタイガーは「外的な脅威」であり、チーズケーキは「内的な脅威」です。

サーベルタイガー(外的な脅威)に出くわしたとき、とっさに危機を回避するために、体は脳よりも手足に血液を回し、あなたが最も衝動的になるように働きかけます。こういった直接的な危機を乗り越える力によって、あなたの祖先は太古の時代を生き延びてきました。しかしこの仕組みは、衝動をコントロールする脳の働きを妨げてしまいます。

わたしたちがチーズケーキ(内的な脅威)を見たときも、じつは「外的な脅威」と同じ反応が起こります。甘くてカロリーの高い食べ物は、太古の時代では貴重であり、摂取することで生存に有利になるものだったからです。

しかし、食料が手に入りやすい現代では、チーズケーキはむしろ食べすぎて健康を損ねる可能性の高い「内的な脅威」です。

わたしたちが、頭の中でダメだとわかっているにもかかわらず、つい衝動に負けてしまうのは、かつて必要だった「外的な脅威」に対抗するためのシステムが、現代の「内的な脅威」に対してもそのまま適用されているからです。だからこそ、衝動に負け、本来やりたいはずのことと真逆の行動をしてしまうのです。

そして、その対処法が「ゆっくり呼吸」なのです。呼吸を遅らせることによって、あなたの身体は「外的な脅威」に対抗するモードから、「内的な脅威」に対抗するモードへと変化します。

「ゆっくり呼吸」をすることで「内的な脅威」に対処するモードに身体が切り替わる

心理学者スーザン・C・セガストロームは、「外的な脅威」に対する身体反応と同様に、「内的な脅威」に対抗しようとした場合にも、生物学上の兆候が表れることを発見しました。

「内的な脅威」に対処するモードに入ると、脳と体が連携して一連の変化を起こし、間の前の誘惑にうち勝って、自己破壊的な衝動を乗り越えようとします。セガストロームはこのような変化を「休止・計画反応」と呼んでいます。

このとき、「外的な脅威」の場合とは逆の反応が起こります。体内のエネルギーは、逃げたり獲得するための手足ではなく、脳に集まります。身体は余計な力を抜いてリラックスするようになります。副交感神経が活発になり、ストレスが和らぎ、衝動的な行動を抑えやすくなるのです。

つまり、「内的な脅威」に対抗するモードに切り替わると、身体の生理的な機能がそれを助けるようにサポートしてくれるのです。

そのための手っ取り早い方法が「ゆっくり呼吸」というわけです。

意識して呼吸を遅らせるだけで、脳と体が自制心を発揮しやすい状態を作り上げてくれます。

自制心が必要なときに、「グッと我慢する」といった力強さに頼るのは悪手であり、じつは落ち着いてリラックスしたほうが我慢しやすいのです。

もちろん「ゆっくり呼吸」だけですべてが解決するというわけでもないのですが、簡単かつ有効な方法なので、知っておいて損はないと思います。

衝動に負けそうになったときは、「ゆっくり呼吸」を試してみましょう。我慢できる確率が上がるはずです。

まとめ

  • 衝動に負けそうになったら呼吸を遅らせてみる
  • ひと呼吸を10秒〜15秒くらいで
  • 「内的な脅威」を認識すると身体が自制心をサポートするよう働いてくれる
  • 「ゆっくり呼吸」をすることで、「外的な脅威」に対抗するモードから「内的な脅威」に対抗するモードに切り替わる

(参考:ケリー・マクゴニガル(著)、 神崎朗子(訳)『スタンフォードの自分を変える教室』第2章)

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