自信過剰と自信不足のどちらがいいか?自分を思いやることの重要性

「自信過剰」であることと「自信不足」であることは、それぞれ長所と短所があります。

自信はありすぎてもなさすぎてもいけないという「自信のジレンマ」があるのですが、それを乗り越える方法を解説していきます。

「自信過剰」な人ほど成功しやすい?

「自信」と「成功」が大きく結びついていることが、数々の研究によって示されています。成功する人は最初から自信を持っていて、さらに成功を収めることでますます自信を持つようになる傾向があるようです。

『自己評価と収入の関係』と題する研究によると、「自信」は少なくとも「賢さ」と同程度には、最終的にその人がどれほど収入を得るかさを左右する重要な要素だそうです。

そもそも、基本的に人間は「自信過剰」なものです。自分自身に対する肯定的な妄想をある程度持ち合わせているくらいが正常な人間であって、正確な自己認識をしている人はうつ病に近い状態なのです。

コーチングの神様とも呼ばれるマーシャル・ゴールドスミスは

成功者は、良い意味で”妄想状態”にある。彼らには、自らの経歴を、自分が何もので、何を成し遂げてきたかの証明としてとらえる傾向がある。こうした過去の肯定的解釈は未来に対する楽観主義を増幅させ、ひいては将来の成功の確率を高める

と述べています。

もともと人は現実の自分に見合わないほど自信を持っていて、さらに「自信過剰」であるほど、生産性が伸び、困難な課題に立ち向かいやすく、職場などで頭角を表しやすいです。自分を信じられるからこそ行動に移せるのです。

「わたしは成功する人間だ!」と自分を欺くことは、ストレスの軽減、ポジティブな自己バイアス、苦痛への耐性強化につながり、これらすべてが競争的な仕事において良い影響を及ぼします。

逆に、「自信不足」な態度は、気分が沈みやすく、チャレンジ精神を持ちにくくなります。

「自信過剰」であることのデメリット

「自信過剰」は良い効果をもたらすことが多い反面、大きな副作用があります。傲慢になり、他者への共感を無くし、現実が見えなくなるのです。

何かをチャレンジするときに自信過剰であることは理にかなっています。しかし、そこで成功してしまうことで、自信過剰は歯止めがきかないくらい膨れ上がってしまい、悪い状況や自分の間違いを認識できなくなってしまうのです。

そして、自信のある人は要職についていることが多いので、自信過剰が災いして、大きな失敗をもたらしてしまうこともままあります。

「自分には力があるという認識」が人間性に悪影響を及ぼすことを示した研究は、驚異的な数にのぼるそうです。自信過剰な人が権力を手に入れたときは特に注意が必要なのです。

自信過剰が恐ろしいのは、自分の実力とは別の、運や不正によって成功した場合でも、自信が増幅してしまうことです。

心理学者のダン・アリエリーは、試験でカンニングする機会を被験者に与える実験を行いました。

試験で不正した被験者は当然ながら良い点を取りました。しかし、それとは別の試験の後に出来ばえをたずねたところ、不正を行った者は、不正を行っていない者よりも自分の点数を高めに評価していました。つまり、不正で得た偽りの成果によって自信が高まっていたのです。

このカンニング実験のように、自信とは根拠もなく膨れ上がっていくものです。そして正常な判断からはどんどん遠のいていきます。自信は、人間が何かをやるために必要なものであると同時に、大きな間違いの原因になる危険なものでもあるのです。

「自信不足」であることのメリット

「自信不足」だと、基本的に、自信過剰であることに比べて貧乏くじを引きやすくなります。

しかし、自信のない人は、謙虚な姿勢で、地道に何かを良くしていくのに向いています。

自信があるよりもないほうが、学んだり改善していきやすいのです。

マーシャル・ゴールドスミスは

自信に満ちた妄想は、何かを達成するのに役立つが、何かを変革するのを困難にする

と言っています。

自信過剰になっているときは、新しい考え方や自分が間違っているかもしれない可能性にそれほど注意を払わなくなります。

自信不足なほうが、自分の欠点を素直に受け入れやすく、真面目に努力したり、状況を改善していくのに向いています。一つのことに熟達しようとしているとき、自信なさげな姿勢はプラスに働きます。自分の欠点を謙虚に改善していく必要があるからです。

また、自信不足な人のほうが、自信過剰な人よりも現実をより正確に把握している傾向があります。

ただ、それは裏返せば、人間は失敗することのほうがずっと多く、現実を見ないくらいの自信がないとチャレンジできないということでもあります。

自信のジレンマ

「自信過剰」だと、気持ちがポジティブになり、行動を起こしやすくなり、人から評価されやすくなります。一方で、傲慢になりやすく、大きな失敗を招いてしまう危険性があります。

「自信不足」は、現状認識が正確で、素直に学び改善していくのが得意で、道を極めるのに向いています。一方で、気分が沈みやすく、人から能力を低く見られやすいデメリットがあります。

チャレンジするときは自信を持って、成功した後は自信をセーブすればいいということになりますが、自信はそんなに簡単にコントロールできるものではありません。

「自信過剰な人は自信を持たないようにして、自信不足の人は自信を持つようにしよう」といっても、あまり問題の解決にはならないのです。

自信はありすぎてもなさすぎてもいけないという「自信のジレンマ」を解決する方法は、「自信に関する理論をきれいさっぱり忘れてしまう」ことです。

そして、その代わりに、「自分への思いやり(セルフ・コンパッション)」を持つのです。

自分への思いやりを持つこと

教育心理学者クリスティン・ネフは、「自信」に代わる概念として「自分への思いやり(セルフ・コンパッション)」を提唱しています。

「自分への思いやり」を持つことは、自信過剰であることのプラス面がすべて含まれる一方で、マイナス面が一切ないそうです。つまり、適度な肯定感(自信)を持ち続けることができます。

一方で、「自分に甘くなってしまうことで、謙虚に改善していくことが得意という自信不足のメリットが失われていくのではないか?」と普通に考えれば思うかもしれませんが、自分を責めたり低くみたりするよりも、自分を思いやったほうが、責任感が増し、やる気や自制心の強化につながるのです。

「決心するだけ」にならないように。失敗した自分を肯定することの難しさと大切さ

に詳しく書いてあるように、実は自分を思いやるほうが、失敗をリカバリーでき、次に良い結果を上げやすいことがわかっています。

「自分への思いやり」は、気分が沈みがちとか、見くびられがちという自信不足の欠点がなく、それでいて物事を学んで改善していきやすくなります。

つまり、「自信」の上位互換のような概念が「自分への思いやり」なのです。

ただ、「自分を思いやる」のは簡単なようで難しいことです。人はこの世の終わりのように自分のことをダメだと一刀両断してみたくなったり、自分を欺いて自信過剰になってしまいがちだからです。

自分の良い部分も悪い部分も認めて「自分を思いやる」ことは難しいですが、それゆえにとても効果が高いのです。

まとめ

  • 自信過剰と自信不足、それぞれに長所と短所がある
  • 「自信のジレンマ」を克服できるのは、「自分への思いやり」という考え方
  • 「自分を思いやる」ことは難しいが、自信過剰と自信不足の両方のメリットがありデメリットがない

(参考:エリック・バーカー(著)、橘玲(監訳)、竹中てる実(訳)『残酷すぎる成功法則』第5章)

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